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2014年01月18日

        

「ジプシーに恋して」 たかのてるこ その2

category - 日記
2014/ 01/ 18
                 
この本を読んで、たかのさんがジプシーを訪ねる旅で刺激を受け、
その後,18年勤めた会社を辞めたことを知りました。

ぜひご紹介したくなり、この本について書くことにしました。



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ここから、昨日の内容の続きです。

現地にいる日本人女性が以前お世話になった、カティという
ジプシーのおばあさんを訪ねて行きました。

カティが結婚したのは14歳。(たかのさんに会った時は60歳)
実家で2回会った男性に2回目に連れ去られたそうです。
父親が一週間後に迎えに来て、そのまま結婚式。
この地区にはよくある「花嫁を盗む」という習慣らしく、
親が娘を盗んだ相手が気に入らなければ、すぐ取返しにいくらしいです。


双方気に入っての結婚が多いだろうとは思いますが、
中にはそうでない結婚もあるんじゃないか、
あるいは、顔が好みくらいで結婚したら、
とんでもなく相性が悪かったというケースも?と
つい考えてしまいましたが、リバーナもカティも
幸せな結婚生活を送れる相手でよかったです。

早く結婚して早く子供を産んだほうがいいという文化で
育っているので、結婚がスピーディに決まるのに抵抗はなさそうです。


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ない人がある人に与えるのは当然という感覚がベースにあるとしても、
リバーナも、カティも、ホスピタリティがすごいです。

ちょっとここで思い出しましたが、リバーナが
鶏の首をはねて鳥料理のおもてなしをしてくれた時、
羽をむしった鶏を火でゆでるのですが、
会ったばかりのガイジンであるたかのさんに、
「子供が火に近づかないように見てて」と頼んで、
着替えに行ってしまうシーンがあるのです。

会ったばかりの人、おまけに言葉の通じないガイジン、信用できますか?


そのガイジンがいい加減だったら、子供が火に近づいて、
大火傷するかもしれないのに、着替えに行く?
この辺の感覚が、全く日本人と違うと感心したエピソードでした。

ランチを食べた後、リバーナは母親のところに連れて行き、
家族を紹介して、夕食をそこでみんなで食べ、
大音量で音楽をかけてダンスを踊りました。
誰にも,何の違和感もない様子でした。

泊まるところがないガイジンを、家に泊めてあげるのは当然、
ご飯を与えてあげるのも当然,一緒に踊るのも当然なのでしょう。


それはもう、驚くほどフレンドリーなのでありました。

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しかし「ない人がある人に与えるのは当然」の逆バージョンは、
「ある人からない人がもらうのは当然」です。

たかのさんは、会いたい人がいて、出かけました。
優しいカティは、たかのさんの汚れた靴を出かけに見て、
ほうきでこすって、泥を落として送り出してくれました。


カティは、ハンガリー語やロマ語を、ことあるごとに
教えて復唱させたりして、本当に面倒見がいいのです。

手土産のケーキの詰め合わせを持って、長距離バスに乗って出かけ、
バスを降りたらタクシーもない小さな村でしたので、
お目当ての伝説のダンサーの家を探します。

東洋人が珍しいのかたくさんのジプシーが集まって、
子供たちがマーテさんの家を案内してくれました。
探しているダンサーの家の近くまで来たらしい時に、
一人のおばさんが家から出てきました。

言葉がわからないので、ダンサーの名前を大きな声で言って、
ケーキの手土産を渡したい旨を手振りで伝えると、なんとそのおばさん、
手土産の箱に手を突っ込んで、ケーキを食べだしちゃいました。

止めようとすると、おばさんは、食べるのをやめるどころか、
集まっている人たちにケーキを配りだしちゃいました。


おっさんも食べ、最初は遠慮していた子供たちも食べて、
必死に取り返そうとすると、おばさんはさらに自分そっくりの子供たちに
遅いんだよ!という雰囲気の会話をして、ケーキを手渡しました。
ケーキは半減してくちゃくちゃ。
伝説のダンサーの踊りを見られたら、お礼に渡そうと思っていたケーキです。

たくさんケーキを持ってる人がいたら、分けちゃっていい。
ついていけない感覚ですが、そういうことみたい。

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伝説のダンサーには結局会えませんでした。
ダンサーの名前は2人知っていて、1人は風邪で病院に行っていたらしく、
もう1人の家を案内されて行ったのですが、
その人は伝説のダンサーと同姓同名だったのでした。
しかし途中まで、同姓同名の勘違いとわからなかったのが面白い。

日本人だったら、いきなり外人が家にきて、
あなたのダンスをぜひ見たくて来た、なんて言われたら、
何か重大な誤解があると思うし、まず、踊れませんよね。

でもこの同姓同名のお母さんは、踊りを見たいと言われて、
照れつつも、一緒に踊りましょうとたかのさんにジプシーの服を着せ、
義娘さんの携帯でジプシー音楽をかけて踊ったんです。


ジプシーの家には、普通はダンスのためにも音楽はつきもの。
後でわかったことですが、この一家は厳格な宗派のクリスチャンで、
お酒もたばこも禁止で普段はダンスもしないのでした。

お父さんはノリノリで、「よ!母さん!」みたいなチャチャを入れ、
お母さんは照れまくって、踊りを中断したりしていました。
その踊りがあまり上手とは言えない出来だったので、
たかのさんは、同姓同名だったんだ・・と気が付いたのでした。

「泊まるところはあるのかい?」とお父さんが聞いてくれ、
「ないならうちに泊まりなさい。食事も食べていけばいい」


苦あれば楽あり,楽あれば苦あり、みたいな展開ですが、
ジプシーは、いい所も悪い所も、濃いですね。

断りもなく遠慮もなく、ケーキを食べられてしまうし、
泊まるところがないとわかれば、親切に提供してもらえました。
朝ごはんのあと、たかのさんがラジオ体操を伝授すると、
お父さんが一生懸命真似してくれました。

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かわいらしい陶器をプレゼントしてくれたお母さんに、
持っていた新品のユニクロのヒートテックシャツを渡し、
ほのぼのとしていた後、お母さんの携帯が鳴りました。

息子さんからの電話で怒り心頭に達したお母さんは、
さっきまでの優しい顔はどこへやら、切れて怒鳴りだします。


息子さんはすぐ隣に住んでおり、お母さんの家に飛び込んできて、
それから、2人の怒鳴りあいが始まったのでした。
たかのさんが室内に居ても意に介さず、般若の顔で言い争い、
息子さんが出ていくと、猛ダッシュでお母さんも追ったそうです。

お父さんは静かに見守り、たかのさんを気遣ってなだめ、
しばらくして赤い目で帰宅したお母さんの横に
ただ寄り添って坐っていたそうです。
たかのさんが自分のせい?と気を使ったのを知って、
そうじゃないからと何度もなだめてもくれました。
お父さん、人間ができてます。

お母さんの、普段踊らないダンスを踊ってはにかんだ顔や、
食事の支度をしたり、陶器のプレゼントをしてくれた
穏やかで優しい顔と、親子喧嘩で見せた切れた顔との
余りの差にショックを受けた、たかのさんでありました。


1000年もの間、自由気ままに生きてきたジプシーが、
敬虔なクリスチャンになって、生活を静かなものに変え、
1000年もの間、音楽を流して踊ってきたジプシーから、
信仰心からとしてもダンスを奪うことは、
かなりのストレスを強いるのでは?と考え込む一幕でした。

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お父さんに見送られ、バス停で待っていると、
若いお母さんと可愛らしい女の子も待っていました。
バスが少し遅れていました。

やっとバスが着いた!と思って乗り込む瞬間に、
女性の悲鳴が聞こえるので振り返ると、
一緒にバスを待っていたお母さんが、若い男に髪をつかまれ、
悲鳴をあげているのでした。
男は彼女の髪を引っ張って、バス停の壁に叩きつけていました。

男は多分暴力夫で、女性は子供を連れて逃げるところだったのに、
バスが遅れたので、追いつかれてしまったのでした。


バスは次の瞬間、ドアも閉めずに発車したので、
驚いたたかのさんは「待って~!」と叫びながら走ります。
バスは止まって、たかのさんとカメラマンを乗せてくれましたが、
たかのさんが女性を指さすと、乗客がみんな,首を振りました
あの女性をバスに乗せたら、あのクレイジーな夫も乗り込んできて、
他の人が殺されてしまうかもしれないということでしょう。

家庭内の虐待は世界中にある問題なのだろうと思いますが、
小さな村に住む,おそらく10代の妻は、バスで逃げるしかなく、
バスが遅れてきたから、連れ戻されてしまいました。

何もしてあげられなくてごめんね、と思いつつ、
彼らはジプシーだったのだ!と気がついた、たかのさん。
自分の身を守れるのは自分だけ。
いざというときに感情を爆発させて、生き抜いてきた、
それがジプシーという民族。

カティの家から1泊2日の、伝説のダンサーに会う小旅行は、
伝説のダンスを見る代わりに、ディープなジプシー経験を
たかのさんに堪能させてくれたのでした。

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ショッキングな経験の後なので、余計に、
たかのさんはいつも明るく朗らかなカティがいとおしくなりました。

「大晦日にご馳走を食べると新年も食べ物がなく食べられるのよ」
ルーマニアでは一般的でなく高価でもある魚料理を大晦日に出して、
胸を張って「ヤパーン!(日本風よ)」と言うカティ。

新年には、日本人が食べるというお米を使って
ピラフを作ってくれるカティ


結婚願望ゼロだと公言しているたかのさんに、
「結婚しなさい、子供を産みなさい」としつこく言うカティ。
自分が子供を産んで幸せだと思っているからなんですよね。

ほとんどボディランゲージで会話してきた2人だけど、
言葉が通じない分だけ、心の垣根をとっぱらう必要ができて、
相手の表情や身ぶりで、相手を読み取ろうと必死になって、
深い部分で通い合うものをたくさん感じたんじゃないかと思います。

たかのさんの「旅が好き」というのは、このレベルの
深い心の通い合い抜きには語れないなと感じました。
普通一般の短い旅をして、そんなに深いところで
心が通い合う感覚を味わうことはないでしょう。

知らない土地に、いきなり飛び込んで、
そこに暮らす人たちと、心の垣根を取り払った付き合いをして、
人間の心の不可思議さを知り、世界の広さを知る旅。
そういう感覚を味わうことなく生きていけないくらい、
たかのさんは、旅に魅せられ続けているように思えます。

たかのてるこさん、あなたはやっぱりすごい。

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この本のあとがきの言葉を少しずつ抜き書きしてみようと思います。

それを「その3」にして、このシリーズ(笑)は完了です。
            
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