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2012/12/23

2012年12月23日

        

ヤマザキマザック美術館 ブロガーデー報告その3  蜻蛉文脚付杯・松文花器

category - 日記
2012/ 12/ 23
                 



ヤマザキマザック美術館の展示室というのは、どのお部屋も、
展示室自体が美しいのが特徴です。
ガラス作品の展示室もこの美しさ。

特にエミールガレの晩年の作品がたくさんあるのですが、
これは実はある古美術商の方が、ずっと売ってくれなかった作品を、
晩年に、「まとめ買いなら」という条件で売ってくださったそうです。

美術商の方というのは、売りたい商品を前に置き、
あまり売りたくない品は奥に置き、
もっと売りたくない品は、倉庫に隠し、
それより更に売りたくない品は、もっと奥の倉庫に置くそうです。
この「まとめ買いなら」と言われたエミール・ガレの晩年の作品は
砂漠の倉庫に置かれていたらしいとか。





蜻蛉文脚付杯 エミール・ガレ

この作品が作られた頃、ガレは白血病に侵されていました。
自分がこの病で死んでいくだろうことも、
もう長くないだろうということも多分わかっていたのでしょう。

この作品の底の部分には、くっきりとしたとんぼと、
陰が薄い、まぼろしのようなとんぼが並んでいます。




ヤマザキマザック美術館のHPには、コレクションの制作年代も記されていますが、
こちらの作品は1904年ごろ、とありました。
ガレが亡くなったのは1904年ですから、
本当に死を目前にした時期にあたります。

晩年のガレは、親しい友人たちに贈るための作品を作っていたそうなので、
制作年代から考えると、この作品もそうなのでしょう。

ガレは死にたくなかったことでしょう。
白血病の苦しみと死の恐怖の中で作られた作品であるのに、
しかし、なんと清らかで美しいことか。

背景の青色は澄んだ悲しさを持ちながら、
水のようであり、空のようであり、
とんぼの命を優しく包んでいるような気がします。

くっきりとしたとんぼと陰のようなとんぼは、
輪廻転生を表現していると思われる、という解説をいただきました。

あまりに東洋的な思想に思われたので、解説員さんに、
それはガレが日本に惹かれ、仏教的な考えに詳しかったため?と伺うと、
この頃のフランスでは、自然回帰の流れが起こっていたとの説明をいただきました。

産業革命の波が押し寄せ、科学と発展の時代を迎えると、
経済は発展し、生活は便利になりますが、引き換えに貧富の差が生まれ、
公害が発生し、疫病が流行るなどの問題を抱えることになりました。

産業が発展していけば、豊かで幸せな生活があるのだと信じ、
突っ走ってきた時期が過ぎてしまうと、
本当に我々は幸せになったのか?
文明の発達は人を幸せにするのか?
そういった疑問が湧いてくるようになり、
自然に帰ろう、という流れが生まれてきたのでした。

とんぼというモチーフは、輪廻転生を表すのにぴったりですね。

元々、ガレは植物学者でもあり、昆虫も大好きで、
自然を愛する人でした。
そういう人が、文明の発達は人を幸せにするのか?という疑問の湧く時代に生まれ、
白血病にかかって、自分の命の少ないことを知らされ、
残された時間に、友人に贈る作品を作ろうと思った・・・。
そういう作品に込められた思いというものはどういうものであったのか。

今までそんな視点で、ガレの作品を見たことがありませんでした。

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こちらはやはり晩年の作品で、松文花器。
とんぼの儚さとは対照的に、生き続ける命の逞しさを感じました。
とんぼといい、松といい、本当にガレは日本を愛していたのですね。

晩年の作品を見ると、どれを見ても、「ガレは生きたかったのだ」という
思いに囚われて切なくなります。
ただ、ガレの視線は、死の向こう側にあるように感じます。





 
その4に続きます。
 
 
            
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