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2011年05月19日

        

役に立たない日々 佐野洋子 その2

category - 日記
2011/ 05/ 19
                 
韓国ドラマにはまり、ヨン様にうっとりし、ウオンビンに心を移し、
イ・ビョンホンから目が離せなくなるような毎日を送るうち、
あごがはずれたそうです。
病院で「首を同じ方向に長い時間向けますか?」と聞かれました。
韓流の見すぎで顎が外れるなんて・・・。
そのうち韓流には飽きてしまった佐野さんですが、
それ以来、男好きが全開したなんて書いています。

香取慎吾にはまり、中村獅童に心を奪われ、
ハマコーがかわいくて仕方ないという佐野さん。

波乱万丈の人生を歩んできた佐野さん。
母親であるシズコさんの虐待を受けた子供時代も、
自律神経失調症とうつ病で苦しんだ時代もあったそうですが、
晩年は心が解けて、男優さんに心ときめいたりして。

乳ガンが見つかって手術をし、抗ガン剤の副作用が重かったようです。
そのきつい1年間に韓流にはまったのであり、
健康で韓流にはまったのとは違うんですけどね。

その後ガンは骨に転移しました。
担当医が阿部寛似の素敵なドクターでラッキーだったとか。
初めての診察の時、「あと何年もちますか」
「ホスピスを入れて2年位かな」
「いくらかかりますか死ぬまで」
「1千万」
「わかりました。抗ガン剤はやめてください。
延命もやめて下さい。なるべく普通の生活が出来るようにしてください」
「わかりました」
ラッキー、私は自由業で年金がないから90まで生きたらどうしようと
セコセコ貯金をしていた。


佐野さんはその足で近所のジャガーの代理店に行き、
そこにあったイングリッシュグリーンのジャガーを指して
「それ下さい」とジャガーを買ったのでした。

買って一週間たったらジャガーはボコボコになっていた。
私は車庫入れは下手でうちの車庫は狭いのだ。
ボコボコのジャガーにのっていて、
その上毎日カラスがボンネットの上にふんをする。
私は今、何の義務もない。子供は育ちあがり、母も2年前に死んだ。
どうしてもやりたい仕事があって死にきれないと思う程、
私は仕事が好きではない。
2年と言われたら10数年私を苦しめたうつ病がほとんど消えた。
人間は神秘だ。
人生が急に充実して来た。毎日がとても楽しくて仕方ない。
死ぬとわかるのは、自由の獲得と同じだと思う。


佐野さんは死ぬ日まで好きなものを使いたいと思い、
きれいでおしゃれな寝巻きや見たいDVDもたくさん買いました。

人はいい気なものだ。
思い出すと恥ずかしくて生きていられない失敗の塊のような私でも、
「私の一生はいい一生だった」と思える。
本当に自分の都合のいいようにまとめるのは私だけだろうか。


佐野さんは笑顔で亡くなったんじゃないかなと思います。
            
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役に立たない日々 佐野洋子 その1

category - 日記
2011/ 05/ 19
                 
佐野洋子さんのエッセイ。

「パンがなかったので、コーヒー屋に朝めしを食いに行く」なんて書いてあります。
壁を背にして6個くらいのテーブルがあり、
そこでタバコに火をつけて壁を背にしている客が
全部ババァだった、全部遅めの朝めしらしかった、そうです。

その「朝めしバアさん」たちを観察しながら、
人が見たら私も変だ、と断言しているのがおかしい。

「ジーパンにインド刺繍の上着を着て、
足は西友で500円で買ったつっかけをつっかけている。
昔はこんなバァさん居なかった。
きっと全部独り者のオーラが立ち上っているだろう。
明日同じ時間に来たら同じ顔ぶれかも知れない。
そして誰とも話をしない。意味もなく力がわいて来た。」

おばあさんの入り口にいた佐野さんの、
料理を作ったり、テレビを見たりといった、
淡々とした日常が描かれているんですが、これが面白いのです。

特に電話の会話は絶品。

ある日、友人にみかんしぼり器をもらう約束をして、
宅急便でとどいたそれを喜んで台所の出窓に置こうとしたら、
そこには既に新品のみかんしぼり器が置いてあり、
それを2ヶ月前に買ったことを思い出した佐野さんは呆然とします。
台所の出窓は毎日目に入る場所でした。
立ったまま泣き出して、大泣きのまま、友人に電話します。

「あのね、わたし本当に、もう呆けちゃったヒィ、
あんたにもらったみかんしぼりヒィ、自分でもう買ってあったのヒィ」
「えっ」
「毎日見てたのに気がつかなかったのワーッ」
「・・・・そういうことあるよ、大丈夫だよ、わたし、
家の中で包丁なくして、まだ出てこないよ。」


別の日には友人から電話が入る。前回の友人と同じかどうかは不明。
「どうしてる?」(友人)
「どうもしていない。あのさあ、私やっぱ本当に呆けたよ。
昨日カードの明細書送って来たんだけどね、
電器屋で12万使っているんだよ。
何買ったか全然思い出せない。やばいよねぇ。」(佐野さん)
「あんたね、それ冷蔵庫!」
「それより私、貯金通帳見たら65万下ろしているのよ。
何に使ったかぜーんぜんわかんないのよ。」
「あんた、それ不動産所得税」
「あっ、そうだった。」


別に呆けかけて嘆いているだけの本ではありません。
物を知らず、失礼な雑誌の編集者に憎まれ口を聞き、
凹んで友人に電話した時はこんな感じの会話でした。

「あのね、私、いいオバアさんになるか、
悪いオバアさんになるか迷ってるの」(佐野さん)
「今さらなによ」
「もう私どんどん悪いオバアさんになっていくの」
「そんなら前はいいオバアさんだったの?」
「・・・さらに悪いオバアさんになってるの。
もうスピード違反になってる暴走族みたいなの」


佐野さんはガンで亡くなったのですが、
「ガンになったので、髪の毛がメリメリと抜ける。
朝起きて、まずガムテープを手に巻いて
枕についた毛をペタペタとはりつける。
私、どうしてこういうことが好きなんだろう」
と書き、
「いくら好きでももうあきた、そうだ、
美容院に行ってバリカンで刈ってもらおう」
と思いつき、
丸刈りにして、帽子をかぶって、お母さんのいる施設に行きます。
(お母さんは前にブログに書いたシズコさんです。)

母の寝床にもぐりこんだ。
母は私の坊主頭をぐりぐりなでて、
「ここに男の子か女の子かわかんないのが居るわ」と言った。

「母さん、私しゃ疲れてしまったよ。
母さんも90年生きたら疲れたよね。天国に行きたいね。
一緒に行こうか。どこにあるんだろうね。天国は」
「あら、わりとそのへんにあるらしいわよ」